統合失調症患者のワーキングメモリ低下を引き起こすメカニズムを解明か

米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。

統合失調症において、作業記憶の欠損が背外側前頭前皮質におけるガンマ振動の発生異常を反映しているようである。ガンマ振動の発生には抑制性パルブアルブミン陽性介在ニューロンの興奮相を要する。このようにガンマ振動は、1つにはパルブアルブミン介在ニューロン上のグルタミン酸受容体シナプスの数に影響されるが、統合失調症におけるグルタミン酸受容体を介したパルブアルブミン介在ニューロンの興奮を制御する分子的要因に関しては、ほとんど知られていなかった。

研究グループは、統合失調症患者において、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御を担う初期遺伝子(NARP、ARC、SGK1)の定量化を行った。統合失調症、双極性障害、うつ病患者、そして十分にマッチさせた健常者(対照)より剖検脳標本(206例)を入手。定量PCR、in situハイブリダイゼーションまたはマイクロアレイ解析を用いて脳組織を検討し、灰白質と層の背外側前頭前皮質における転写レベル、および細胞分解レベルを測定した。検討は、2013年1月1日から2014年11月30日の期間に実施された。NARP、ARC、SGK1のmRNA発現量を統合失調症患者と対照者の標本において比較し、診断特異性は気分障害患者の標本におけるNARP mRNAレベルにより評価した。

主な結果は以下のとおり。

・定量PCRにより、対照群と比べて統合失調症患者の標本における。NARP mRNA発現量は25.6%と有意に低値であった(平均[SD]:0.036[0.018] vs 0.049[0.015]、F1,114=21.0、p<0.001)。
・一方、ARC値(F1,112=0.93、p=0.34)およびSGK1値(F1,110=2.52、p=0.12)では、対照と統合失調症患者の間で有意な差はみられなかった。
・これらの結果はin situハイブリダイゼーション(NARP;統合失調症患者vs.対照者:40.1%の低下、p=0.003)、およびマイクロアレイ解析(NARP;統合失調症患者vs.対照者:3層錐体細胞で12.2%の低下[p=0.11]、5層錐体細胞で14.6%の低下[p=0.001])により裏付けられた。
・統合失調症患者の標本において、NARPとGAD67のmRNA値間に正の相関が認められ (r=0.55、p<0.001)、パルブアルブミン介在ニューロンにおけるGAD67 mRNA発現は活動性依存的であった。
・またNARP mRNA値も、双極性障害患者の標本(-18.2%、F1,60 =11.39、p=0.001)、うつ病患者の標本(-21.7%;F1,30 = 5.36、p=0.03)において健常対照者に比べ低下しており、精神疾患患者の標本で顕著であった。
・3つの診断群において、NARP mRNA値はソマトスタチンmRNAと正の相関を示し(すべてのr≧0.53、すべてのp≦0.02)、その発現は活動依存的であった。

出典

Kimoto S, et al. JAMA Psychiatry. 2015 Jun 3. [Epub ahead of print]

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