統合失調症にみられる特異的な遺伝子発現

米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。

統合失調症はDLPFC回路の不全を反映する作業記憶の異常と関連する。作業記憶はDLPFCの第3層および第5層に存在する興奮性錐体細胞(第5層中には第3層よりも少なく分布)の活性に依存する。統合失調症患者のDLPFC灰白質の遺伝子発現プロファイルは複数の研究で示されているが、第3層および第5層に錐体細胞を認める2つのポピュレーションにおける細胞タイプ特異的なDNAからの転写産物発現に関してはほとんど知られていない。

そこで研究グループは、とくにDLPFCの第3層および第5層における遺伝子発現の情報は、統合失調症とそれに関連する疾患との相違について新しい、かつ明確な知見を提供するであろうと仮説を立てた。また、錐体細胞機能不全の自然史に関する新たな情報になるのではないかと考え、統合失調感情障害の診断、あるいは死亡時の薬物使用など、その他の因子が錐体ニューロンにおける遺伝子発現パターンに及ぼす影響の解明を試みた。検討は、統合失調症または統合失調感情障害を有する36例、および比較対照としてマッチさせた健常人を対象とし、各被験者のDLPFCの第3層または第5層における錐体細胞をレーザーマイクロダイセクション法により採取。同細胞のmRNAについて、マイクロアレイおよび定量PCRによりトランスクリプトーム解析を行った。

主な結果は以下のとおり。

・患者群では、ミトコンドリア(MT)内またはユビキチン-プロテアソーム系(UPS)機能における遺伝子発現が著しくダウンレギュレートされていた(MT関連経路およびUPS関連経路に対するp値はそれぞれ<10-7、<10-5)。
・MT関連の遺伝子変異は第3層の錐体細胞で顕著に認められ、UPS関連の遺伝子変異は第5層の錐体細胞で顕著にみられた。
・同じ被験者のDLPFC灰白質サンプルでは、これら変異の多くは発現が認められない、または発現程度が小さく、変異は錐体細胞特異的な所見であることが示唆された。
・さらに、統合失調症患者における変異を反映する所見は、統合失調感情障害を有する被験者では発現がみられない、または発現程度が小さく(最も有意な共変数、p<10-6)、頻繁な統合失調症併存に寄与する因子ではなかった。
・所見を踏まえて著者は「統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的なMTおよびUPS関連遺伝子の発現が低下していることが明らかとなった。これら細胞タイプ特異的なトランスクリプトームシグネチャーは、統合失調感情障害を特徴付けるものではないことから、分子細胞学を基盤とした臨床表現型の相違が生ずる可能性がある」と述べている。

出典

Arion D, et al. Mol Psychiatry. 2015 Jan 6. [Epub ahead of print]

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