発達過程の脳への放射線照射、その後の後遺症への影響は

放射線療法は小児脳腫瘍に対する一般的な治療であるが、しばしば認知機能低下を含む遅発性の後遺症を引き起こす。その機序としては、海馬でのニューロン新生の抑制が部分的に関与していると考えられている。しかし、若年者の成長過程にある脳への放射線照射が歯状回のニューロンネットワークにどのような変化をもたらすかはまだよくわかっていない。スウェーデン・ヨーテボリ大学のGinlia Zanni氏らは、マウスを用いた研究を行い、成熟脳への照射では長期増強(LTP)の減少のみが引き起こされるが幼若脳ではさらに長期抑圧(LTD)も生じ、成熟脳と幼若脳とで長期シナプス可塑性に対する全脳照射の影響が異なることを明らかにした。結果を踏まえて著者らは、「シナプス変性のメカニズムを解明する必要はあるが、今回の知見は発達過程の脳への放射線照射の影響、ならびに頭部放射線療法を受けた若年者にみられる認知機能障害の理解につながる」とまとめている。Developmental Neuroscience誌オンライン版2015年6月2日号の掲載報告。

研究グループは、生後11日目の雄のWistar系ラットに全脳照射(6Gyの単回照射)を行い、歯状回の電気生理学的な特性を解析した。

主な結果は以下のとおり。

・細胞外野の興奮性シナプス後電位(fEPSP)と線維斉射(fiber volley)の比から内側貫通線維路(MPP)における興奮性伝達を評価すると、偽照射群と比較し照射群でシナプス効力が増加した。
・MPP-顆粒細胞間シナプスのPaired-pulse ratio(PPR)は、照射により変化しなかったことから、神経伝達物質の放出確率は変化しないことが示唆された。
・高周波刺激(4train)を加え歯状回での長期シナプス可塑性を誘導すると、偽照射群に比べ照射群ではLTPからLTDへの変化が認められた。
・ダブルコルチンの免疫染色により形態学的変化を調べると、照射後はニューロン新生が完全に消失していたが、パルブアルブミン介在ニューロンの抑制性ネットワークは損傷されていなかった。
・これらのデータは、幼若脳への照射がシナプス可塑性の永続的な変化を引き起こしたことを示唆しており、陳述学習の機能障害と一致する。
・著者らによるマウスでの先行研究とは異なり、リチウム(商品名:リーマスほか)を投与しても研究パラメータは改善しなかった。

出典

Zanni G, et al. Dev Neurosci. 2015 Jun 2. [Epub ahead of print]

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